生涯の師となる人が実践する3つの行い
こんにちは。皆さんには仕事での「師」と呼べる人がいらっしゃいますか?
私は四半世紀近く働いて、師と呼べる人が1人だけいます。
彼は私に社会人として、職業人としてのイロハを教えてくれ、その教えは今も様々な場面で活かされています。また、仕事に対して自信を持つことができるたくさんのきっかけも与えてくれ、今の私があるのは彼のおかげであると心底感じています。
今回は、私の師がどのように私を指導したのかを紹介しながら、生涯の師と思えるような人が実践することをお伝えしたいと思います。
目次
1.相互信頼と適切なフォロー
以前の以下ブログでもお話しましたが、やはり何より大事なのは「信頼」です。師となる人は、ベースに信頼できる行動習慣を持っています。おさらいしますと、
- Integrity(誠実・高潔)
- Fairness(公平性)
- Transparency(透明性)
- Accountability(説明責任)
というものです。その上で、こちらにも大きな「信頼」を寄せてくれます。
私は入社2年目に大きなプロジェクトのリーダーをその師より任されました。
中学までは確かに学級委員とかやってましたが、それ以降、リーダーとは無縁の人生で、同期の中でもどちらかというと後ろからついていくタイプの人間でした。
しかし、この仕事が私を大きく変えました。
それまで人前で何かするということは苦手でマネジメントなんて考えたこともなかった人間が、その後何百人というプロジェクトを主導し、1000人以上の前でプレゼンできるようになれたのです。
後日、師に「どうして何もできない私を抜擢したのですか?」と聞いたところ、笑って「忘れちゃったけど、人がいなかったから仕方なくかな」という答えでした。あまり本心は語ってくれない人なので、周りにも聞いてみたら、どうやら「仕事に誠実に向き合っていた」ことを評価してくれたようです。先に紹介した仕事のベースとなる部分、「Integrity」です。その部分だけで、私を信頼し、大きな仕事を任せてくれたのです。
また、ただ任せるだけでなく、適切なタイミングでフォロー、指導をしてくれました。
例として、一人休日出勤して色々検討していたとき。師はふらっと現れて、悩んでいた部分の基礎的なところからホワイトボードに書いて解説し、終わるとさっと帰られました。また別の日に測定所に一人こもって測定していたとき、これまたふらっと現れて、結果を見て、順調そうなのを理解した上で、お昼をごちそうして帰っていきました。
この「適切なタイミング」というところが大事なところで、何かするたびに細かく指摘する人や「まかせたから」といって全く放置する人がいますが、そういう人たちには「信頼」されていると感じませんし、こちらも「信頼」したいと思えないですよね。今考えてもとても重要なことだと感じます。
2.愛ある叱責
師と呼べる人は甘やかすだけでなく、叱り方も上手です。この「叱る」ということが重要で「怒る」とは違います。
ググるとその違いについて色々解説がありますので、そちらに委ねたいと思いますが、要は「愛ある指導=叱る」ということです。
その「愛ある叱責」をするためには、それまでに「相互信頼」が出来上がっているということが大切ですし、その上で「本気で自分のことを考えて言ってくれている」ということがわかるような叱り方をする必要があります。
未だに忘れることができない出来事があります。あるプロジェクトのリーダーとして、判定会議に参加した際、十分な裏付けができない状態で説明し終わった時です。本来であれば、同じ部署の上司であり、フォローするべき私の師が「そんないい加減な説明するんじゃない!」と数十人の参加者の前で大声で叱責したのです。
前代未聞のことで、会議終了後、判定する側の人たちからも「大丈夫?あんなに怒らなくてもいいのにね」と慰められる状態でした。
しかし、私には叱られる理由がわかりました。明らかに準備不足だったのです。十分な検討がないまま、日程だけを考慮し、また、そのときはもういくつかのプロジェクトを回していたので、慢心もあったと思うのですが、自分ならやれるだろうと安易に考えていたのです。
それが完全に見透かされました。なので、周りは心配していましたが、私は寧ろ叱られたことに感謝していました。
そして、それ以後、大きな判断が必要な時、いつも心の中で、その師に問うようになりました。それまでの検討結果を基に「師ならばどんな質問をするだろう?どのようなことを懸念するだろう?」ということを考えるようにし、その結果、より大きなプロジェクトをこなしていけるようになったのです。
よく「叱る際には大勢の前で叱るな」という話がありますが、本当に「愛ある叱責」であれば、そうした理論など関係ないということをこの時学びました。どんな理論よりも「本当にその人のことを思っているか」ということの方が大事なんですよね。
3.間接的に褒める
褒められるのは大抵の方が嬉しいと思いますが、直接褒められるより間接的に褒められる方がより印象深いような気がします。
私の師があるベンダーの責任者にこちらの事業の紹介をすることになり、プロジェクトのリーダーであった私と一緒に、その企業に訪問したときの話です。そのプレゼンの中に、私を紹介する資料があり、「この者が今回のリーダーです。まだ若いですが、非常に有望で優秀な人間です。御社と一緒に今回のプロジェクトを成功に導いてくれるでしょう」と説明されたのです。
事前に何も聞いていなかったので、驚くと同時に感激しました。まだ30歳手前のころでしたので、他社のお偉いさんに自分をそのような形で紹介してくれるということが、嬉しかったですし、更なるモチベーションになりました。
また、別の日にある部長から「君の昇進試験の論文が非常に素晴らしいと聞いたのだけど、見せてくれないかな?今後の参考にしたいんだよ」と言われました。よくわからなかったのですが、どうやら私の師が部長会で「論文の内容が素晴らしいので、是非見てほしい」と宣伝してくれたようでした。
もちろん直接褒められても嬉しいのですが、時として、少し嘘くさく聞こえたりすることがあります。間接的に聞かされると、本当に評価されているという感じがして、モチベーションや自信につながるということをこの時肌で感じました。
4.まとめ
いかがだったでしょうか?「生涯の師となる人が実践する3つの行い」について、もう一度整理してみますと、
- 相互信頼と適切なフォロー
- 愛ある叱責
- 間接的に褒める
ということでした。
私はこれらから仕事をする上で大切な事、「誠実」「信頼」「自信」を学びました。
私の師が最初に私を指導してくれたのが、40歳前半であり、その年齢を自分はとっくに超えていますが、未だにこのような指導ができるような人間になっていないと痛感しています。こうした師に出会えたことに感謝するとともに、自分も誰かに「生涯の師」と言われるような行いをしたいと今回振り返り改めて感じました。
今回は自身の回顧録のような感じになってしまいましたので、お役に立てる内容だったかどうかわかりませんが、皆さんもご自身の「師」について考えてみるのもよいのではないでしょうか。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。